2026年4月25日(土)―7月26日(日)
13:00-18:00 土・日・祝日のみオープン
日本にシュルレアリスムを紹介し、生涯にわたりその普及に尽力した瀧口修造は、戦前・戦後を通じ何人かのアーティストと詩画集を共作しています。この展覧会ではその中から、阿部芳文(後の展也)との『妖精の距離』と、6人の画家・版画家との『スフィンクス』を展示します。なお『妖精の距離』の英語表記Distance of a Fairyは、阿部展也旧蔵本に書き込まれた表記に準じたものです。

『妖精の距離』は、阿部芳文との共作による詩画集で、コロタイプ印刷された阿部の鉛筆ドローイングと、瀧口による詩とが組み合わせてあります。発行日は昭和12年10月15日、発行人は大下正男、発行所は春鳥会(後の美術出版社)です。定価2円で100部発行されました。戦災で失われたものも多いと思われ、瀧口のみならず、日本の前衛詩集のなかでも代表的な稀覯本と目されています。戦後、『瀧口修造の詩的実験 1927~1937』(思潮社、1967年)が刊行されるまで、瀧口にとって唯一の詩集に当たるものでした。発行当時、阿部は24歳で、2年後の1939年には美術文化協会に参加しました。戦後、瀧口が無償で運営を引き受けたタケミヤ画廊の第1回展「阿部展也デッサン・油絵個人展」(1951年6月1日~15日)でも、この詩画集が展示されています。刊行された1937年は、瀧口と山中散生の努力により実現した「海外超現実主義作品展」が、各地を巡回した年でもあります。今回展示したのは100部中14番の、山中散生宛て献呈書名本で、いわば日本へのシュルレアリスム導入・普及の記念碑ともいえる1冊でしょう。

『スフィンクス』は、北川民次、瑛九、泉茂、加藤正、利根山光人、青原(内間)俊子の6人が、すでに発表されていた瀧口の詩から各自1篇を選び、自らの版画作品と組み合わせた詩画集です。久保貞次郎の私家版として1954年に50部が出版されました。久保は美術評論家、コレクター、パトロンとしても有名で、美術教育にも熱心に取り組み、後に跡見学園女子短期大学の学長や町田市立国際版画美術館の初代館長に就任しています。版画の作者6人は、それぞれ久保と親しい間柄でした。北川は久保とともに創造美育協会の設立発起人を務め、また他の5人や、本書を編集した福島辰夫、表紙デザインの山城隆一は、いずれも久保が支援していたデモクラート美術家協会のメンバーです。今回展示した『スフィンクス』は刊行された50部中Ⅰ番の久保貞次郎旧蔵本で、北川、瀧口、久保の3人によるペン書きの署名があります。
今回の展覧会は、『妖精の距離』と『スフィンクス』の2冊を並べてご覧いただける、貴重な機会です。瀧口自身や各画家にとって、各詩画集がどういう意味を持つものであったか、改めて考えていただく契機となれば幸いです。








